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過去の助成者

平成20~24年度に実施した南方熊楠研究奨励事業(若年研究者奨励事業)の助成者からのコメントを掲載しています。

 

〇平成20年度助成者
志村真幸(慶應義塾大学文学部准教授)         採択時所属京都外国語大学非常勤講師
わたしがこの研究費によって実施したのは、当時とりくんでいた熊楠の英文論考の翻訳・出版(『南方熊楠英文論考[ノーツ アンドクエリーズ]誌篇』)のための調査です。また南方熊楠顕彰館をくりかえし訪れ、その資料にふれるなかで、熊楠という人物への理解も深まっていきました。それらの成果は著書『南方熊楠のロンドン』へ結実し、サントリー学芸賞を受賞でき、やがて現職へつながったのも、若手研究者助成事業のおかげと思っています。

唐澤太輔(秋田公立美術大学大学院複合芸術研究科准教授) 採択時所属:早稲田大学大学院社会科学研究科博士後期課程
熊楠は生涯に渡って夢に関心を持ち続けました。私は本研究奨励事業で、熊楠の夢に関する記述について、日記、書簡、論考を網羅的に調査し、データベース化しました。そして「やりあて」(偶然の域を超えた発見や発明、的中。熊楠の造語)と彼の見た夢との関連性について探求しました。そしてこれが私の博士論文の基礎となり、後には『南方熊楠の見た夢―パサージュに立つ者―』(第13回湯浅泰雄著作賞)として刊行することができました。本研究は、現在の私の研究における最も大事な部分としてあり、今後もそれは変わらないと思います。

 

〇平成21年度助成者
辻晶子(大阪経済大学経営学部講師)          採択時所属奈良女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程
本研究費では、晩年の熊楠と鳥羽出身の風俗研究家・岩田準一(1900-1945)との間に交わされた、日本男色史に関する往復書簡について研究を行いました。そこで得た知見によって単著『児灌頂の研究――犯と聖性』(法蔵館2021。第4回説話文学会賞受賞)を刊行できたことを、心から有り難く思っています。その後も継続して、民俗学者としての岩田準一の再評価をはかろうと研究を重ねています。駆け出しの院生であった私にとって、本助成事業は研究者としての大きな分岐点となりました。

 

〇平成22年度助成者
高陽(中国・清華大学外文系准教授)          採択時所属:清華大学外文系ポストドクター
日本の東京学芸大学で学位が取れて帰国した年の2010年は、ちょうど熊楠顕彰館から初めての助成金をいただいた年でした。私にとって大変意味があり、帰国後、続けて熊楠の漢籍書き込みを研究のテーマにして、熊楠に関する論考を積み重ね、著書の一部分となって、説話文学会賞の受賞にも繋がったと思います。主に南方熊楠顕彰館における『太平広記』、『夷堅志』をはじめとする『今昔物語集』と関わりのある漢籍の書き込み資料を中心に、翻刻し・比較研究することによって、熊楠の文学での貢献を少しずつ明らかにしてきて、今に至ります。今は『大唐西域記』の書き込みを中心に研究しております。今の私がいるのは、熊楠顕彰館からの助成金が、大きな励みとなったからだと感じられます。これからも熊楠に習って引き続き研鑽していきたいと思います。

 

〇平成24年度助成者
平川恵実子(鳴門教育大学准教授)           採択時所属四国大学非常勤講師
熊楠の研究をし始めた約10年前に奨学金を受給し、南方熊楠顕彰館までの交通費や宿泊費に使用させていただきました。顕彰館では熊楠が収集した資料を閲覧し、館職員や出会った研究者の方々に、色々とわからないことを教えていただきました。熊楠の基礎的資料を揃えることもでき、安定して熊楠研究ができたことに感謝しております。