鬪雞神社から約2.5km北方に位置し、稲成川東岸の砂岩・頁岩から成る丘陵の東斜面に造成した平坦地に鎮座する。1571(元亀2)年頃に稲荷大明神の社名が定まり、江戸時代を通じて伊作田・糸田両村の産土神として崇敬を集めたが、1871(明治4)年に稲荷神社へと改称した。東西約280m、南北約200mの神林の主要樹種はコジイで、ヤマモモ・タブノキ・ヒメユズリハ・ホルトノキなどの大木が混在する。熊楠は「森林鬱蒼たる大社」と評価し、1914(大正3)年4月29日付けの『牟婁新報』において、伊作田稲荷神社が植物研究の対象として保護すべき「本邦稀有の珍品」であると指摘した。今に伝わる伊作田稲荷神社の社叢の樹種は豊かであり、神域としての風致景観は優秀である。
※写真は令和3年2月~6月に開催した「南方曼陀羅の風景地Instagramスタンプラリー」の投稿写真を掲載しています。
稲荷神社の柯(しい)の森林は本邦希有の珍品なり。・・・
余は稲荷神社については、特に愛護すべき珍品多きを見、常に深く考え居れるは、将来余が田辺を去るの時は、何とかして稲成村当局に向かい、珍植物の形態、名称等より、育成せる地点等を詳細に指導し置き、その後は村が責任を持ってこれを愛護存続せしむる事としたきものなり。
『牟婁新報』大正3年4月29日
南方曼陀羅の風景地
田 辺 市 : 神島、鬪雞神社、須佐神社、伊作田稲荷神社、継桜王子、高原熊野神社、奇絶峡、龍神山、天神崎
上富田町: 八上神社、田中神社
白 浜 町 : 金刀比羅神社
串 本 町 : 九龍島