熊楠は1892(明治26)年ロンドンで雑誌寄稿による著述活動をはじめた。初期の10年間はすべて英文である。日本の雑誌への継続的な寄稿がはじまるのは1907(明治40)年以降である。
熊楠の生前の著書(単行本)は、『南方閑話』『南方随筆』『続南方随筆』の三冊だけで、いずれも雑誌掲載の論文を集めたものである。
寄稿した雑誌(前掲写真参照)は44誌に達するが、「太陽」に連載した十二支の動物にちなんだ話(いわゆる「十二支考」)は最も著名である。熊楠の日記や書簡の字は相当難読だが、原稿はていねいに書かれていて読みやすい。他人の論文を読んで新説、新資料を補強する短文の場合は、葉書で投稿することが多かった。また活字になった自分の論文にもこまごまと補遺や追記を書き入れている。
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