奇絶峡

 右会津川中流域に延長約500mにわたって連続する峡谷である。地質は新生代新第三紀新世の粗粒砂岩・礫岩で、峻厳な崖地から崩れ落ちた岩塊が河床の随所に転石となって散乱している。地形・地質の特質及び高温多雨の気象条件の故に、両岸の山域にはウバメガシ・ヤマモモなどの照葉樹を中心にアカマツ・クロマツ、ホルトノキ・バクチノキなどの暖地性樹木が散在する複雑な構成の森林が広がり、本州南部地域でも数少ないシダ植物などの亜熱帯性植物も叢生する。熊楠は、『南方二書』において、奇絶峡の「美景は耶馬溪に優れること数等なる上珍植物多し」と評価し、道路建設等の開発による破壊を憂えた。両岸の緑樹及び左岸の滝も含め、独特の渓流の風致景観を今に伝える。

 

当田辺より二里半ばかりに、奇絶峡とてはなはだ好景の谷一里ばかりつづけるがあり。
美景は耶馬渓に優れること数等なる上、珍植物多し。
                                 『南方二書』


南方曼陀羅の風景地
田 辺 市 : 神島鬪雞神社須佐神社伊作田稲荷神社継桜王子高原熊野神社奇絶峡龍神山天神崎
上富田町: 八上神社田中神社
白 浜 町 : 金刀比羅神社
串 本 町 : 九龍島