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第31回~南方熊楠賞受賞者

第31回南方熊楠賞受賞者(自然科学の部)
山極 壽一 氏(総合地球環境学研究所所長)

 大学院在学中にニホンザルの形態特性の変異を調べることから人類学、特に霊長類学研究を開始した山極氏は、その後、研究の場をアフリカに移し、時にはゴリラ語を駆使しながらゴリラの群れに接触した結果、ゴリラの多様な行動様式や社会関係を明らかにした。また、研究活動のみではなく、ゴリラと人間との共存を目的とした基金の設立、ゴリラを中心としたエコツーリズムの可能性についての模索など、その活動は多岐にわたっている。徹底したフィールドワークを行い、自然のサルやゴリラの群れの懐に飛び込むことにより、多くの新知見を得、さらにはゴリラの保全活動等にも取り組む姿勢は、熊楠翁の精神を彷彿させるものである。

第32回南方熊楠賞受賞者(人文の部)
江原 絢子 氏(東京家政学院大学名誉教授)

 調理という作り手の視点から日本の食文化を深く探求することにより、日本における食物史を開拓し、「和食文化」を学術領域として確立することに大きく貢献した。さらに、功績として特筆すべきは、学会活動を先導し、地方、女性、次世代の研究者養成に大きく寄与している点である。人びとの暮らしのまわりに広がる文化に対して文献渉猟と現地観察を徹底するというスタイルをとっており、その点で南方熊楠の精神に大いに通じていると言える。

 

第33回南方熊楠賞受賞者(自然科学の部)
塚谷 裕一 氏(東京大学大学院教授)

 東南アジアの熱帯林をはじめとする国内外でのフィールドワークを通じて、菌根を介して完全に栄養を菌類に依存する「菌従属栄養植物」など、1つの新属、30の新種を含む44の植物の新分類群を命名したほか、最先端の分子レベルの植物学の研究においても、葉の形態がどのような分子遺伝学的仕組みによって形づくられるかを理解する上での基本といえる「ルール」のいくつかをモデル植物を使って明らかにし、葉の形態形成における遺伝子経路の解明において世界をリードする研究成果を多くあげてきた。これらの成果は現代のナチュラルヒストリーとして高く評価される業績であり、また、その研究成果や植物誌を広く一般に普及する精力的な執筆活動は、熊楠翁に通ずるものがある。