このたび、南方熊楠顕彰館館長 曽我部大剛が令和3年3月31日をもちまして退任いたしました。新たな館長に、令和3年4月1日付で松居竜五(まつい・りゅうご)が就任いたしましたのでお知らせします。
新館長の松居竜五は、大学院生の1990年に初めて田辺市の南方熊楠邸を訪ね、その後、南方熊楠資料研究会、南方熊楠顕彰会の一員として、初期の邸内資料調査から熊楠研究・顕彰事業に深く関わってまいりました。南方熊楠顕彰館建設時は、建設委員会委員や設計提案競技審査員を務めています。現在、南方熊楠顕彰会理事・学術部委員、南方熊楠研究会運営委員、『熊楠研究』編集委員、熊楠関西研究会等を兼任しています。
新館長とともに、南方熊楠研究の拠点としての活動を一層発展してまいりますので、引き続き南方熊楠顕彰館へご指導・ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
■略歴
1964年 京都府生まれ
1991年 東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退
同大学教養学部講師
1994年 ケンブリッジ大学客員研究員
1997年 駿河台大学助教授
2001年 龍谷大学国際文化学部助教授
2007年 同大学同学部准教授
2012年 同大学同学部教授(2015年 学部名変更)
2016年 東京大学大学院総合文化研究科 論文博士(学術)
現在 龍谷大学国際学部教授、日本国際文化学会事務局長
■受賞歴
1992年 小泉八雲賞奨励賞
2017年 第14回角川財団学芸賞
■館長就任のごあいさつ
この度、南方熊楠顕彰館長を拝命いたしました、松居竜五でございます。
1867年に生まれた南方熊楠は、若き日に米英で学問的研鑽を積んだ後、那智での思索の日々を経て、37歳で和歌山県の田辺にたどり着きます。後半生の熊楠は、紀伊半島の生態を調査するための拠点として田辺を位置づけるとともに、ここから文通による国内外の学者との対話を続けました。そのような環境の中で、民俗学と博物学を中心とした、あらゆるものを対象とする独自の学問が、切り開かれることとなりました。
熊楠の没後、その資料は遺族の手によって、旧邸の蔵の中にたいせつに保管されることになりました。2006年に旧邸の隣地に建設された南方熊楠顕彰館には、それらのほとんどが移管されています。現在、顕彰館には、熊楠が生涯にわたり蓄積したさまざまな書籍や抜書やメモ類、標本などの資料が、ほぼ当時のままの状態で残されています。
こうして奇跡的に継承された熊楠の遺産を受け継いだ南方熊楠顕彰館では、関連機関やさまざまな分野の研究者と協力して、熊楠の学問の全体像を明かにする作業を続けてきました。これまで、地元の田辺のみなさまの厚いご支援と、外部に開かれた研究体制によって作り上げられてきた顕彰館のさらなる発展のために、微力ながら精一杯努めたいと考えております。どうかこれからも、みなさまのお力添えをいただけますよう、伏してお願い申し上げる次第です。
令和3年4月1日
松居 竜五