残響の熊野PartⅡ 熊楠がすれ違った風景の現在
残響の熊野 PartⅡ
『熊楠がすれ違った風景の現在(いま)』に寄せて
ここ数年で田辺の風景は大きく変化しました。
毎日何気なく見ていた風景も、取り壊されて初めてその価値に気づくことがあります。
次世代に残したい田辺の風景、それは南方熊楠ゆかりの風景でもあります。
高山寺の曽我部大剛さんが選び、日本画家の故牛尾武さんが描いた作品集、これが『熊楠がすれ違った風景の現在(いま)』です。
曽我部さんを先頭に、三人で田辺の街を歩いた日々が懐かしくよみがえります。
私たちはノスタルジーの向こうに、昭和の暮らしの息遣いや、城下町の賑わいや、熊野詣の人々の残像を感じていました。
牛尾武さんの筆は、現在の風景を素材にしながら、この街を流れた、永遠の時間を捉えていたように思います。
残念ながらこれらの作品が、牛尾武さんが田辺を描いた最後のものになりました。
作品をじっと見ていると、さまざまな時代の田辺を旅することができます。
そこには幼い頃の自分や、懐かしい人が歩いていそうな気がしま
す。
想像の翼を広げて、豊かな旅をお楽しみください。
多田稔子
南方熊楠顕彰会常任理事
(一社)田辺市熊野ツーリズムビューロー会長
2010年秋、熊野本宮館で開催された牛尾武素描展『残響の熊野』。
翌2011年2月に素描画「熊楠邸」「鳥ノ巣海岸」、日本画「神島」を追加し、南方熊楠顕彰館で、『残響の熊野PartⅡ ・・・熊楠がすれ違った風景の現在』として、装いも新たに展示されました。
その際、NPO情報発信センター田辺・南方熊楠顕彰会が作成した展示パンフレットを公開します。牛尾画伯の素描画・曽我部住職のエッセイに、熊楠との関係をちりばめたパンフレットです。
※素描画と文は紀伊民報に連載されました。
※顕彰館にて500円で販売しています。